こんばんは♪
巣篭もり生活、ヒマなのでアビガンについて調べてみました。
新型コロナウイルス(COVID-19)感染症に対して抗ウイルス効果が期待できそうな薬剤としては、アビガンとレムデシビルがあります。
AIで既存薬のスクリーニングも行われているようですが、今のところはこの2つだけ。これらは、実際に臨床効果の検証が始まっています。
いずれにしても、早く世界を救う薬剤が現れてほしいですね。化学賞とか生理学医学賞とか平和賞とか、私的には、いくつもノーベル賞をあげてもいいでしょう(笑)。
アビガンとは
アビガンは販売名で、薬物名は、ファビピラビルです。
新型コロナウイルス感染症に投与されていますが、現在承認されている効能効果はインフルエンザウイルス感染症のみ。薬価収載もされておらず、一般には流通していない、なんとも特殊な薬です。
そして、新型コロナウイルス感染症薬として利用されるには、当然ながら、効能追加(用法用量の変更も)の承認が必要です。
ただし、新型コロナウイルス感染症の特殊性から、承認されていなくても、現在のように臨床研究として治療のために投与できます。
承認うんぬんより、むしろ、有効な患者の背景、投与量や期間などの治療方法の確立が急務でしょうね。
消える「富山」の表示
写真は、アビガンが生まれた富士フィルム富山化学の総合研究所。
富山市下奥井にあり、アビガン承認当時は富山化学工業の研究所でした。2018年10月に富士フイルムRIファーマと合併し、富士フィルム富山化学となりました。
付近にある施設も含め、建物の表示は「FUJIFILM」になり、富山化学の「富山」の表示は消えてしまいました。
新型コロナウイルスに対する臨床効果
4月18日の日本感染症学会特別シンポジウムで報告されています。
投与した約350人で、軽症者の9割、重症者(人工呼吸器が必要)の6割に、薬を飲み始めてから2週間後に症状が改善する傾向がみられたとされています。
ただし、オープン試験なので、服薬しなかった場合はどうだったのかは不明です。新型コロナウイルス感染症は、アビガンを使わなくても症状が改善する場合があります。
厳密には、患者背景が同じような人で、飲まなかった人との比較臨床試験が必要でしょう。
現在の効能効果など
以下の情報は、添付文書、インタビューフォームなどより抜粋しています。
製造販売承認日:2014年3月24日
薬価基準:未収載
新型インフルエンザの流行に備えて国が備蓄しており、一般には流通はしていません。
これは副作用(催奇形性など)の問題があるのでしょう。承認条件の3番めには「厚生労働大臣の要請がない限りは、製造販売を行わない こと。 」としばりがあります。
【組 成 ・ 性 状】
販 売 名:アビガン錠200mg
成分・含量 (1錠中):ファビピラビル 200mg
化学名:6-Fluoro-3-hydroxypyrazine-2-carboxamide
構造式:
【効能又は効果】
新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症(ただし、 他の抗インフルエンザウイルス薬が無効又は効果不十分な ものに限る。)
【用法及び用量】
通常、成人にはファビピラビルとして 1 日目は 1 回1600mg を 1 日 2 回、 2 日目から 5 日目は 1 回600mgを 1 日 2 回経口投与する。総投与期間は 5 日間とすること。
物質特許は失効
特許:物質特許(特許3453362)は、1999年の8月18日に出願されており、特許期間満了日は、出願から20年目となる2019年8月18日でした。つまり、現在では失効しています。
なお、インフルエンザ感染症薬として、特許の5年間の延長登録を受けています。開発にかなりの年月を要する医薬品ではよくあることです。
そのため、同用途としての存続期間満了日は2024年8月18日となります。ただし、この延長は、あくまでインフルエンザ感染症薬としてであり、新型コロナウイルス感染症薬としては適用されません。
総薬物投与量は24.4g
新型コロナウイルスの臨床研究では、成人には 1 日目は 1 回1800mg を 1 日 2 回、 2 日目から は 1 回800mgを 1 日 2 回、最長で14日間投与されているようです。
この場合、総薬物投与量は、24.4gにもなります。薬の服用量としては、かなり多めですね。
ちなみに、国は200万人分のアビガン(ファビピラビル)の備蓄を確保するそうですが、原末にすると、48.8トンになります。
タミフル(オセルタミビル)の場合、通常、治療的投与では、成人及び体重37.5kg以上の小児には、オセルタミビルとして1回75mgを1日2回、5日間経口投与です。合計、0.75gで、タミフルと比較してもアビガンは多めですね。
なお、タミフルには予防的投与も認められています。ファビピラビルについても可能性がありそうですが、副作用が課題ですね。
薬効薬理
ファビピラビルは、RNAウイルスのRNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)を選択的に強く阻害する抗ウイルス薬です。
それ自身には抗ウイルス活性はなく、プロドラッグで、体内で代謝されて活性体のファビピラビルRTP(リボフラシル三リン酸体)となり、効果を示します。
ファビピラビルRTPは、RNAの材料となる物質に類似しているため、ウイルスのRNA合成酵素は、ファビピラビル-RTPを間違えて取り込んでしまうようです。
参考
アビガン錠200mg 添付文書、インタビューフォーム:富士フィルム富山化学
ファビピラビル(T-705) ― ウイルス RNA 依存性 RNA ポリメラーゼ阻害剤 ― :日本臨床微生物学会2019 (pdf)
緊急寄稿(2)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療候補薬アビガンの特徴(白木公康):日本医事新報社